在宅医療・訪問看護では、一人ひとりの価値観を尊重して生活を支えることが非常に重要です。そのやり方には正解が無いと言えますし、一方でたくさんの正解があるとも言えます。なぜなら、同じ人生経験をして同じ価値観を持つ人はいないため、仮に利用者さんが抱える病名・状態が同じでも、人によって支援の内容は違ってきます。利用者さんや家族が大切にしている価値観を支援者も一緒に大切にすることで“フィットした生活”を支える、そんな理念を掲げています。
昨今では、〇〇特化や〇〇専門と謳う訪問看護ステーションがたくさんあります。それ自体は悪いことではないと考えていますが、実際の訪問現場では、精神疾患を有する方が骨折したり、がんや神経難病を患う方が精神疾患を発症したり、小児訪問で伺っている家庭の祖父母にも支援が必要だったり、医療的処置を必要とする子ども(医療的ケア児)に発達支援も必要だったり、変形性関節症でリハビリをする患者ががんを患ったりと、本当にさまざまなケースがあります。また、より高齢化が進むことで複数の疾患を抱えて生活する方は全く珍しくなくなりました。私たちはこのような多くのケースを経験するなかで、創業時から病名や状態を問わずにご依頼を受けています。訪問看護・在宅医療の場は、いわば「在宅科」であろうと考えているからです。
訪問看護・在宅医療の場は、
いわば「在宅科」である。
例えば、弊社の利用者さんには小児(子ども)もたくさんみえます。この領域では、数年前より“移行期支援”がクローズアップされています。移行期支援とは、小児期に発症した慢性疾患などを持つ児が成人するにつれて、必要な医療や支援を途切れさせないように小児科から成人の診療科へとスムーズに引き継ぐ取り組みのことを言います。しかし、小児から成人になる段階でその方の人生がリセットされるわけではありません。私たちは、「小児」や「成人」として支援を分けるのではなく、“その方”を支援していく形を大切にしています。
在宅での看護・リハビリは、利用者・家族の方々と訪問スタッフの人間関係をベースとして、一人ひとりのニーズに応じたものを提供します。なおニーズには「〇〇がしたい」という顕在的なものだけではなく、潜在的なものもあります。潜在的なものは本人も気付いていないことが多く、これを汲み取るには「この方にとっての当たり前=常識」が何であるかを知らなくてはなりません。例えば友人と話すなかでも、意外に他人は自分とは違った「常識」を持っていると感じたことはありませんか? 私も含め、人はこういう「常識」をたくさん持っています。その常識が、いつの日か「価値観」となっていくのだと、私は考えています。そして私たち支援者は、このような価値観を支える仕事だと思うのです。
また、それぞれの機関にはそれぞれの機能・役割があります。例えば急性期病院なら、受診理由となった症状・病気を“治す・改善する”ことが目的なので、同じ病名や状態の方には一定の看護が提供されます。しかし、在宅は“生活する場”ですので、「なぜその方に看護・リハビリを提供するのか」「提供されている看護・リハビリの方針はそれで良いのか」を深く考察する必要があり、同じ病名や状態でも全く異なる看護・リハビリが提供されます。そのためには、本人の性格・家族構成・ライフヒストリー・経済状況・趣味・仕事などの様々な要素を考慮していく必要があるのです。こういうと難しそうと思われるかもしれませんが、看護師やリハビリ職の多くは、「人の役に立ちたい」という内発的な動機づけがあるのではないでしょうか。「人の役に立ちたい」を、それぞれの専門知識や技術を活かしながら支援することが、看護・リハビリの原点であり、醍醐味なのだろうと思います。